裁判にオンライン会議システムを使うことにはセキュリティ上の問題がある

2020年5月15日、シンガポールで37歳のマレーシア人男性に対してオンライン会議システム「Zoom」を使って死刑が宣告された。

新型コロナウイルス感染防止のため外出制限が続くシンガポールで、薬物取引事件の被告が、オンライン会議システムを通じて死刑を宣告された。

出典:裁判官、被告にZoomで死刑宣告 シンガポールの公判 (朝日新聞デジタル、2020年5月20日)

これに対して、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは「非人道的だ」とコメントした。文脈的にアムネスティ・インターナショナルのコメントは死刑制度自体に対する批判であると思われる。また、人の命どうなるかがビデオ通話一本で宣告されるわけだから、ここには倫理的な問題も存在するだろう。

ただ今回述べたいのは、セキュリティ上の問題だ。Zoomに関しては、現在はある程度修正されたとは言え様々なセキュリティ上の問題が指摘されていた。また、Zoomに限らずインターネット上のサービスというのは多少ではあるが常に何かしらの攻撃を受ける可能性をはらんでいる。

今回シンガポールの裁判所で死刑宣告に使われたZoom上のミーティングに対して何かしらの攻撃・干渉が行われた場合、それはすなわち司法への攻撃・干渉が行われたということだ。裁判は法に基づいて公平・公正に行われる必要がある。裁判の結果は、人の人生や生死を左右する場合もある。

そして現実的にZoom上のミーティングに対して攻撃を行える個人や団体は複数存在する。例えば、以下のような個人や団体が該当すると思われる。

  1. サービスを管理し、技術的に全てのミーティングに介入可能な「Zoom社」
  2. 各国の諜報機関の様な大規模な組織
  3. Zoom全体をダウンさせられるほどのDDoSを行えるサーバを保有する個人や団体
  4. 知識のある攻撃者またはその集団
  5. 内部犯

全体的に攻撃のコストは高いと感じるが、それでも特定の個人や団体が「判決の宣告を遅らせる」「実際とは異なる宣告を行う」などのような司法への干渉を行える可能性があることには非常に大きな問題がある。

司法への干渉を防ぐためにも、できる限り裁判は直接の対面で行われるべきである。全てをオンラインで行おうとするのは間違っている。